桂離宮

精緻に計算された、空間調和の美
眺望の移ろいに感嘆する、日本庭園の最高峰

京都西部を滔々と流れる桂川に沿って、泰然と佇む桂離宮。宮家の別荘として江戸時代初期に造営され、当時の面影を今もそのままに残している。創建当初より“天下の絶景”と評され、1933年にここを訪れたドイツ人建築家、ブルーノ・タウトは、その日記に「泣きたくなるほど美しい」と記したという。池泉回遊式の庭園は起伏に富んだ地形で、橋を渡り、飛び石を踏み越えるごとに、見える景色が変化する。中央に配された広大な池は、ある場所では天橋立に見立てた海の情景となって伸びやかに広がり、またある時にはその姿を隠し、気づけば杉や檜の生い茂る山道を歩いているかのような風情となる。目にする風景は、自然、建物、景物すべてが見事に調和し、歩を進め様々な角度から眺めるにつけ、その計算し尽くされた配置に驚嘆する。苑内に点在する茶屋は、格式の高い松琴亭、峠の茶屋風である賞花亭、田舎家風の笑意軒、池の水面に映る月が絶妙な位置で眺められる月波楼と、それぞれに趣向が凝らされ、時節に合った茶事が楽しめるようになっている。造形の美しさと実用性を兼ね備えた上で、全体としての調和と格調が保たれている桂離宮。1時間という限られた参観時間では物足りなく感じるほど、尽きることのない魅力にあふれている。季節が移ろうごとに、訪れたくなるに違いない。
取材・文/junko ikeuchi

参観は事前または当日申し込みが必要です。
詳しくは公式ウェブサイトでご確認ください。