Re:Kyoto特別インタビュー
西脇 隆俊 京都府知事

住み慣れた地域で高齢者が安心して暮らし続けるために。
京都の魅力が再認識できる、府の取り組みとは。

西脇 隆俊 京都府知事

1955年7月16日、京都市出身。1979年東京大学法学部を卒業後、建設省入省。山形県企画調整部総合交通課長、国土交通省大臣官房帳、復興庁事務次官などを経て、2018年、京都府知事に就任。現在は2期目。趣味はマラソン。「今日はどの方面に行こうかと目的地を変えながら、いろんな所を走っていますが、鴨川沿いが一番多いですね。景色が非常に美しいですしね。京都マラソンもそうですが、バラエティに富んだコース設定ができるから、京都を走るのは楽しいです。」

Q. 高齢化の現状と、今後の将来設計について教えてください。

A. 我が国では、2025(令和7)年にはいわゆる「団塊の世代」が、2040(令和22)年には「団塊ジュニア世代」が後期高齢者となって、高齢者人口がピークを迎えると予想されています。京都府としては、高齢になっても、生きがいを持って活躍でき、支援が必要になっても安心して生活できる社会を、それぞれの地域の実情に応じて構築することが重要だと考えています。京都府では来たるべき「超高齢化社会」にいち早く対応するため、2011年、全国に先駆けて「京都地域包括ケア推進機構」を設立しました。

Q. 地域包括ケアシステムとは何でしょうか?

A. 地域包括ケアシステムとは、地域が一体となり、高齢者が医療・介護・福祉それぞれのサービスを切れ目なく受けられる体制のことをいいます。住み慣れた地域で自分らしく暮らしながら、必要なケアを組み合わせて選ぶことができます。京都府では、医療、介護、福祉、行政、大学などの機関が相互に連携を図り、「オール京都体制」で地域包括ケアシステムの実現を目指しています。

Q. 地域包括ケアについて、京都府ならではの取 り組みを教えて下さい。

A. 京都地域包括ケア推進機構では、様々なプロジェクトを通じて、市町村だけでは取り組みが難しい、広域的な医療・介護ネットワークの構築や専門人材の養成確保といった、基盤を作り上げる取組を進めてきました。例えば、認知症総合対策プロジェクトでは、認知症総合対策推進計画「京都式オレンジプラン」を策定し、アンケートなどにより計画の進捗状況を当事者の方々に評価していただくという試みを日本で初めて実施し、当事者の社会参加や本人発信を支援する取り組みに繋げています。また、患者情報共有システムとして全国に先駆けてスタートした「在宅療養あんしん病院登録システム」は、地域の診療所や訪問看護師、ケアマネジャーと病院を繋ぐ多職種連携を支援する仕組みで、京都府内の利用者数は
1.5万人を超えています。さらに、在宅医療・介護に必要な多職種連携の要となる「在宅療養コーディネーター」を、これまで累計792名養成しており、高齢者の在宅生活の継続を支える仕組みづくりを進めています。こうした、医療・介護・福祉の垣根を越えて施策を実施できるのも、京都地域包括ケア推進機構の関係団体が一丸となって施策を推進する、京都府ならではの成果であると考えています。

Q. 西脇知事が考える「京都の魅力」とは?

A. 一番の魅力は、1,200年以上に渡って営まれてきた歴史や文化が、現在においても京都の生活の中に息づいているということだと思います。歴史ある寺社仏閣、能や狂言などの芸能、美術、食文化など、挙げればキリがありませんが、そういった日本の文化に不可欠な要素が自然と生活の中に浸透していて、多くの人々が関わることで京都の文化ができあがっています。技術や人材が綿々と受け継がれて、そういった歴史の積み重ねの上に今の京都の暮らしがあるということは、世界的に誇れる京都の魅力だと思います。

Q. 今後の京都府政における目標を教えてください。

A. 「安心」、「温もり」、「ゆめ実現」という3つの視点に基づいて、「あたたかい京都づくり」を目指していきたいと思っています。コロナ禍を経験して、改めて人と人との触れ合いや絆、地域のつながりの大切さを痛感しました。それを大事にする京都にしたい、という思いを「あたたかい」という意味に込めています。もともと京都にはそういう土台があると思いますし、実現させるためには現状まだコロナが収束し切っていないことや物価高、国際情勢などいろいろな課題はありますが、「あたたかい京都づくり」は今後ずっと目指していきたいですね。

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