大河内山荘庭園

昭和の名俳優が生涯をかけて作り上げた
嵐山の雄大な自然が映える借景庭園

亀山公園の北側、竹林の小径の尽きるところに位置する大河内山荘庭園。「丹下左膳」を演じて一世を風靡した時代劇俳優、大河内傳次郎の邸宅で、6,000坪にも及ぶ広大な庭園は、約30年もの歳月をかけて傳次郎自らが作庭したという。入口から庭園へ入り、石段を進む。中門をくぐり北へ向かうと、傳次郎が晩年を過ごしたという大乗閣が見えてくる。背後には嵐山がそびえ、その雄大な景観に、風格ある建物が見事に調和する。
小倉山の起伏を利用した庭園は回遊式になっており、歩を進めるごとに目にする景色は変わってゆく。白砂と松のコントラストが美しい枯山水の庭と、そこに建つ持仏堂、苔の緑に包まれ楚々として佇む茶室・滴水庵、遠方の比叡山まで市内を一望できる月香亭。それぞれをつなぐ園路にも工夫が凝らされている。樹木の間を縫うように歩むうち、感覚がリセットされ、気持ちを新たに次なる情景を目にすることができるのだ。
展望台で比叡山や大文字山など京都の歴史ある山々を眺めたあとは、下山の道すがら、傳次郎の妻の菩提所である妙香庵、大河内傳次郎記念館にも立ち寄り、最後に抹茶と茶菓子をいただく。
桜が咲き鶯の囀る春、苔庭が最も美しい夏、紅葉が鮮やかな秋、澄んだ空気が清々しい冬。季節ごとに異なる表情を見せる庭園は、一度のみならず、二度三度と訪れてみたくなるはずだ。

取材・文/junko ikeuchi

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大河内山荘庭園 TEL/ 075-872-2233